『シリーズ 環境社会学講座』全6巻の刊行がスタート
環境社会学の講座としてはおよそ20年ぶりとなる『シリーズ 環境社会学講座』全6巻(新泉社)の刊行が始まりました。
第一弾は藤川賢・友澤悠季編の第1巻『なぜ公害は続くのか——潜在・散在・長期化する被害』。13の章と3つのコラムが代表的な事例を幅広く取り上げて解説しつつ、環境問題を引き起こす構造の根深さを「公害」の切り口から論じています。
第2巻以降も続々、刊行予定です。この企画には三上も編集委員として参加していて、第6巻『複雑な問題をどう解決すればよいのか』の編者を、宮内泰介さんと共に務めています。
《新刊》
1 なぜ公害は続くのか(藤川賢・友澤悠季編)
https://www.shinsensha.com/books/5499/
《続刊》
2 地域社会はエネルギーとどう向き合ってきたのか
3 福島原発事故は人びとに何をもたらしたのか
4 答えのない人と自然のあいだ
5 持続可能な社会への転換はなぜ難しいのか
6 複雑な問題をどう解決すればよいのか
https://twitter.com/env_socio_shin
◎シリーズ 環境社会学講座 1
『なぜ公害は続くのか——潜在・散在・長期化する被害』
藤川賢・友澤悠季/編
四六判/320頁/2500円+税
ISBN978-4-7877-2301-7
2023.4.10発行
2023.4.5頃発売開始
公害は「過去」のものではない。
問題を引き起こす構造は社会に根深く横たわり、差別と無関心が被害を見えなくしている。公害の歴史と経験に学び、被害の声に耳を澄まし、犠牲の偏在が進む現代の課題を考える。公害を生み続ける社会をどう変えていくか——。
〈公害の歴史が教えるのは、見えていたはずのものが不可視化されていく過程である。その背後には、環境侵害の影響を背負わされるのが社会的に弱い立場の人びとに偏るという、公害の最初期から続く社会構造もある。公害の「解決」を強調する動きが、実は公害発生の経緯を引きずるものであり、現在の環境問題にも影響を与えているのであれば、不可視化の仕組みに注意し、それに対抗する方法を考える必要がある。——編者〉
目次から主な内容
序章 不可視化される被害と加害……藤川 賢・友澤悠季
I 公害とは何か
第1章 足尾銅山鉱煙毒事件にみる公害の原型……友澤悠季
第2章 新潟水俣病にみる公害被害の現在……関 礼子
第3章 日米の産業廃棄物問題と草の根環境運動……藤川 賢
コラムA 複合公害としてのアスベスト問題……堀畑まなみ
II 環境的不公正の潜在と拡大
第4章 なぜカネミ油症被害者は被害を訴え続けなければならないのか……宇田和子
第5章 熱帯材と日本人——足下に熱帯雨林を踏み続けて……金沢謙太郎
第6章 マーシャル諸島発「核の正義」を求めて……竹峰誠一郎
第7章 環境正義運動は何を問いかけ、何を変えてきたのか……原口弥生
コラムB 環境過敏症という名の「公害」……堀田恭子
III 公害は終わっていない
第8章 NIMBYと「公共性」……土屋雄一郎
第9章 水俣病にとっての六五歳問題——「先天性(胎児性)という問い」から……野澤淳史
第10章 「記憶」の時代における公害経験継承と歴史実践……清水万由子
第11章 環境リスク社会における公正と連携への道……寺田良一
コラムC 公害地域再生が目指すもの……林 美帆
終章 不可視化に抗うために……藤川 賢・友澤悠季