mikami lab.@北海道大学 科学技術コミュニケーション研究室

北海道大学で科学技術コミュニケーション・科学技術社会論を担当している三上直之のサイトです。2022年5月下旬から1年間、英国ニューカッスル大学に客員研究員として滞在しています

【NC日記】第9週:2022年7月25日〜31日

7月25日(月)

朝7時に研究室へ。8時(日本時間16時)からのオンラインセミナー「欧州の気候市民会議の最新動向と日本の学び」(主催:環境政策対話研究所、共催:地球環境戦略研究機関)に向けてスタンバイ。セミナーでは「気候民主主義とは何か? 欧州におけるその展開」と題して15分の講演をした。私、甲斐沼さん、森さんの講演の後、3人のコメンテーターからのコメントがあり、その後、柳下さんの進行でディスカッション。参加者は時間帯によって増減があったが、150人ぐらいの参加があったようで、質疑応答も非常に活発だった。気候市民会議に対する関心が続いていることを感じた。

当日の資料や録画は以下のリンク(環境政策対話研究所ウェブサイト)から。

https://inst-dep.com/info/2022-08

7月26日(火)

今朝も6時半に研究室に。朝7時から、研究プロジェクトのミーティング、大学院の講義(前回に続き同時配信。今日が最終回)、大学院ゼミと、ほぼ3連続でオンライン。13時に終了。こんな日は、終わった時にはくたくたになってしまい、ほとんど何もする気力が残っていないことが多い。とりあえず昼食を食べて、研究室に戻ってきてから気を取り直して科研費の申請のことを考える。2017年以来、進めてきたミニ・パブリックス、気候市民会議についての一連の共同研究を発展させるために、どんなメンバーで何をすべきか、どんな性格の共同研究にすべきかという大枠を考える作業。色々とメモは出来上がっていくが、まだ骨子はまとまらず。

前日、前々日と朝早くからオンラインでの対応が続いたので、今日は早めに(と言っても18時前頃だが)に切り上げる。一昨日作ったカレーが残っているので、晩ご飯はそれで手早く済ませ、19:00頃から散歩に出かける。この夏の日の長さを生かさないともったいないという気分が日に日に強まり、ともかく今日は気分転換も兼ねて外に行こうと考えた。このところずっと天気が良く、夏至から1カ月経ったとはいっても、午後7時はまだ明るい。

宿舎前の幹線道路の下をくぐって北の方に進み、公園の中をしばらく歩くと、タウン・ムーア(Town Moor)という共有地に出る。400haもあるというだだっ広い土地。牛などが放牧されていたり、スポーツイベントなどにも使われたりすることもあるらしい。同じようなMoorが、もっとキャンパスに近いものも合わせて、この周りに他にもいくつかある。

タウン・ムーア(Town Moor)

タウン・ムーアの入り口にある看板。3月〜11月には家畜が放牧されると書かれている

上の写真の "Freemen" がよくわからないのだが、Freemen(フリーメン)とはイギリス近世の都市を構成する主要な構成員として、さまざまな経済的・政治的・福祉的特権を与えられたエリートであった、らしい*1。近代以降、実質的な特権が廃止された後も制度は残り続け、ニューカッスルにもいまだにFreemenの称号があるらしい。市のウェブサイトには "Hereditary Freemen" についての説明があり、「世襲制フリーマンの子は、20歳になると、市長から(世襲制フリーマンの)宣誓就任をする資格を与えられる」とのこと。

このフリーメンもそうだが、ほぼ毎日初めて聞く単語や表現に出くわす。散歩の途中で家庭菜園も見かけたのだけれど、イギリス英語ではallotmentという言い方をするらしい。これも初めて知った。地図でallotmentと書かれていたのを見た時は、何か区画に分けられている土地だろうという想像はできたけれど、家庭菜園だとはわからなかった。

散歩の途中で見つけたAllotments(家庭菜園)

7月27日(水)

朝、定例のミーティングの後、昨日に続いて脱炭素化技術ELSIプロジェクトのミーティング。今年度行うテクノロジーアセスメントの第2ラウンドで取り上げるテーマについて、大まかな方針が固まった。その後は、午後に予定しているスティーブンとの打ち合わせの準備、そして15:00から打ち合わせ。翌週からスティーブンが2週間ほど夏休みに入るということで、当面の研究の進め方について相談した。一旦宿舎に帰って家事などを済ませてから、大学の前のパブでスティーブンと待ち合わせ、街中のインド料理店で一緒に夕食。

7月28日(木)

全学公開講座「コロナ時代の新常識」の最終回、ナッジ政策に関する橋本努先生の講演。質疑応答の進行を担当するためオンラインで参加した。

研究室から参加すべく、いつも通りノートパソコンをWifiで接続して準備をするのだが、回線がかなり遅いことに気づく。今までも何となく感じてはいたが、有線でネットワークにつながっている大学のデスクトップのパソコンで回線速度を測ってみると、こちらは桁違いに速いことがわかった。諸々の作業には、自分のノートの方が便利なのでそちらを使っているのだが、オンライン会議の時には有線でつながっているパソコンを使う方がいいのかもしれない。というわけで、本番1時間前に、大急ぎで大学近くのショッピングセンターに駆け込んで、デスクトップで使用できるウェブカメラを購入。10:30(日本時間18:30)からの本番に間に合った。開始前にそんなハプニングもあったが、公開講座自体は、橋本先生の興味深いお話と、活発な質疑応答で、無事に終了した。

7月29日(金)

今日は早朝に仕事を済ませ、午前中から日帰りで小旅行へ。ローマ帝国五賢帝の一人、ハドリアヌス帝(在位AD117-138)が、北方の警備のために造らせた「ハドリアヌスの長城」の遺跡がニューカッスルの近くにある(世界遺産である)。これは一度、見に行きたいと思っていた。

長城自体は、東は現在のニューカッスルのあたりから、西はアイリッシュ海沿いの現在のカーライルまで117キロにわたっていた。約6-7キロの間隔で、500-1000人の兵士が詰める要塞も設けられていた。風雨による損傷や、建材などとして持ち去られたりで、往時の姿はとどめていないが、壁の遺構は今でも所々にあり、いくつかの要塞は発掘がなされて遺跡が見学できるようになっている。

いつもの中央駅から、タイン川に沿って山の中を走る列車で西へ向かう。1時間ほどでHaltwhistle駅まで行き、ここからバスで、まずはRoman Army Museumへ。じつは大学博物館にもハドリアヌスの長城に関する展示があり、前日の昼休みに行って、少し予習していたのだが、こちらはハドリアヌスの長城やローマ軍のことに特化した博物館であり、さらにわかりやすい。軍の組織や、長城の構造、兵士の仕事や生活などがとてもよくわかった。ハドリアヌス帝についての展示は、辺境のブリテン島を含めて、帝国の各地を視察して回った「旅する皇帝」だったこと、複雑な性格の持ち主だったことなど、本などで読んだことのある話が中心だったが、要点が整理されていて参考になった。

Roman Army Museum

博物館見学の後、昼過ぎの路線バスに乗って、主要な遺跡の一つであるHousesteads Roman Fortに行こうとしたのだが、どうやらダイヤが変更になっているらしく、14:00頃まで博物館で足止め。あわててもしょうがないので、カフェでのんびり。ようやく来たバスに乗って、Housesteads Roman Fortへ。

要塞の遺跡(Housesteads Roman Fort)

全体では数百メートル四方のサイズがある要塞が発掘され、その中にあった、本部棟や兵舎、倉庫、病院、門などの建築物の遺構が、こんなふうに見学できる。

要塞からは、下の写真のように壁が伸びている。今はこんな姿であるが、完成時は4-5メートルの高さがあったとのことだから、当時はもっとそびえ立つような感じのものがここに建っていたことになる。

ハドリアヌスの長城(Hadrian's Wall)

要塞の西側には、一部、壁の上を歩けるようになっているところがあるので、行って壁の上を歩いてみた。

一部、長城の上を歩くことができるようになっている(写真の右側)

数百メートルぐらい進むと「遺跡保存のため立ち入り禁止」との標識が現れる。その先も、見渡す限りの荒野(moor)に長城が続いていくという景色。

この先、立ち入り禁止(壁の上でなければ問題ない様子だが)

帰りのバスの時間も気になるので、ここで記念撮影をして引き返す。立ち入り禁止の札のすぐ隣りには、フットパスの入り口があり、壁の上でなければ入っても問題ないようだった。

フットパスの入り口

このHousesteadsに限らず、ハドリアヌスの長城に沿って長いフットパス(自然歩道)が整備されていて、ハイキングを楽しむ人の姿も多くみられた。遺跡やフットパスの維持管理などはNational TrustやEnglish Heritageといった保護団体によって担われているようである。行く先々に、これらの団体の看板やパンフレットが置かれていて、各団体のユニフォームを着た案内スタッフがいた。自然に親しみつつ、歴史遺産にも触れるという組み合わせがイギリスらしい。

Housesteads Roman Fortの案内図。右下にEnglish HeritageとNational Trustのロゴマークが入っている

駐車場から要塞の遺跡に向かうフットパス(2点とも)

要塞の門をモチーフにした、アート作品(期間限定)

Housestaeds遺跡の中には、期間限定でこんなアート作品も展示されていた。要塞の東西南北にあった門をモチーフとした作品で、中は展望台にもなっている。2世紀に造られた要塞は軍事施設だったのだけれど、今もし、門を作るとしたらどんな意味を込めたいかが表現されているように思った(それを表現したキーワードが表面に散りばめられている)。やや場違いな感じもしたけれど、伝わってくるものはあった。

バスの時刻表変更によってRoman Army Museumで2時間ロスした影響で、今日もう1カ所訪れようと思っていたChesters Roman Fort & Museumに寄る時間はなくなってしまった。バスでChestersの前を素通りして、Hexham駅へ。

Hexhamからニューカッスルは行きにも通ったルートを引き返す列車の旅。タイン川沿いの夏の景色が美しい。

夕方、ニューカッスル中央駅に着いてから、やっておきたいことがあった。手元の『地球の歩き方』に、ニューカッスルの中心部にも「ハドリアヌスの城壁の一部」が残っているとの情報があったので、訪れておこうと思ったのである。

駅のすぐ裏手に「それ」はあった。

ハドリアヌスの城壁の一部?

行ってみてわかったのは、これはハドリアヌスの長城ではなく、中世になってこの町がニューカッスルと呼ばれるようになってから造られた城壁である、ということだった。1960年代に修復作業がなされて、このように保存されているのだという。同じような城壁が、ここから歩いて10分ほどの中華街の隣にも残っている。

旅行ガイドブックは情報をコンパクトにまとめてくれていて本当に助かるが、時にこうした間違いもある。今回は、情報が間違っていたからといって損害があったわけでもなく、その範囲では、こんな発見も旅の楽しみのうちかもしれない。

ニューカッスルハドリアヌスの長城の東の終点だった、という話自体は間違いではない(大学博物館のジオラマでも、Roman Army Museumのパネルでもそう説明されていた)。その東端は、市の中心部からメトロで10分ほどタイン川沿いにさらに東に、つまりは海の方へ行ったところ。その名もWallsendという駅の近くにあり、ここは遺跡になっている(Segedunum Roman Fort & Museum)。

ハドリアヌスの長城はそのWallsendで終わるのだが、そのさらに先、タイン川が北海に注ぐSouth Sheildsの町にもArbeiaというローマの要塞があった。ここもHousesteadsと同様に発掘されて見学できるようになっている。しかも要塞の門が一つ、復元されているという。WallsendとSouth Shieldsは明日の昼前から時間がありそうなので、行ってみることにしよう。

ちなみに、下の写真はニューカッスルの中央駅のホームにあった掲示。このところ鉄道職員のストライキが時々あって、今週も水曜日に一度あり、明日土曜日にも予定されている。もともとこの週末は1泊で出かけることも考えていたのだが、日帰り旅行に切り替えたのだった。

鉄道職員のストライキに関する駅の掲示

7月30日(土)

朝、OECDレポートの翻訳プロジェクトのオンラインミーティングに参加した後、昼前からローマ帝国の遺跡めぐり2日目に出かける。メトロに乗って黄色い線の終点のSouth Shieldsへ。駅から15分ほど歩いた海の近くに、ローマの要塞跡がある。昨日見学したHousesteadsは復元されてはいなかったのだが、ここでは門の一つと、一部の建物が復元されている。

要塞の構造や、そこにいた軍隊の組織などは同じであり、違う場所で同じものを改めて見学をすることで、理解が深まった。

South Shieldsの要塞遺跡 Arbeia

このArbeia遺跡の発掘は19世紀から盛んに行われてきたとのこと。復元された門は本当に見事であった。塩野七生氏が『ローマ人の物語』の中で、ローマの遺跡の維持・管理は、イタリアにあるものも含めてすべてイギリス人に任せた方がいいと書いていたけれど、この2日間の見学を通じて、なんとなくその話もわかるような気がした。どこの遺跡・施設も派手さはないものの、丁寧に保存や復元、展示がなされていた。

伝統的にローマ学が盛んなのがイギリスである。しかも「防壁」は、彼らにとっては自国内にある重要なローマの遺跡だ。それでここも徹底して調査され、遺跡の保存にも配慮が行きとどき、そのうえ遺跡観光の客目当ての小ぎれいな旅宿も「防壁」ぞいにあるという具合で、初夏から初秋にかけての週末旅行には恰好の場所になっている。それでいて俗っぽさが目立たないのは、いかにもイギリスらしくて嬉しい。ローマ時代の遺跡の管理はイタリア内にあるものでもイギリス人にまかせるべきだとは私の持論だが、質でも量でもイタリアに断じて劣るのが、ブリタニアにあるローマ時代の遺跡や彫像である。大英博物館でさえも、例外ではない。それなのにローマ時代の遺物に向けられる英国人の細心の配慮は、ただ単に古代ローマへの愛か。それとも、古代のローマ人を継承したのは自分たち大英帝国の民だ、という気概の名残りか。(塩野 七生『賢帝の世紀──ローマ人の物語[電子版]IX』新潮社) 

Wallsendも見に行こうと思ったが、South Shielsでゆっくりしすぎて、時間が足りなくなってしまった。タイン川を渡るフェリーで対岸に行き、メトロに乗りWallsendは素通りして帰る。これは近所なので、また出直すことにしよう。

7月31日(日)

終日、宿舎で過ごす。朝、オンライン読書会に参加。アンドレイ・クルコフの『ウクライナ日記』。ユーロマイダンの運動に対する評価の難しさ、著者の微妙なスタンスなどが主な議論に。自分としては十分に読み込めていなかったところでもあり、参考になった。日記だということもあって、随所に現れる食に関する描写について注目した話もあり、これも面白かった。

私が話題にしたのは「ロシア語で書くウクライナの作家」である多言語作家としての作者のスタンス。運動に対して完全に同一化しない一方で、多文化主義や自由、基本的人権の尊重、暴力への批判などが一貫しており、その点に共感しながら読むことができたと思う。以前の日記に書いた、同じ著者の『ペンギンの憂鬱』の読後感も紹介した。

午後は家族と電話で話すなど。科研費の申請は、骨格のたたき台がようやくできあがった。

*1:小西恵美「近世イギリス都市におけるフリーメン制度の意義:キングス・リン1635-1836年」『三田商学研究』48 (5): 91-111, 2005年、https://cir.nii.ac.jp/crid/1050282812367438976

【NC日記】第8週:2022年7月18日〜24日

7月18日(月)

日本では海の日で祝日だが、こちらでは平日。とはいえ、大学は完全に夏休みモードで、政治学のフロアもスタッフは数人しか出勤していない状態が続いているので、閑散としていることには変わりはないのだが。このフロアで、平日毎日研究室に来ているのは自分ぐらい。その他、昼間はロビーや空き会議室でパソコンに向かって熱心に仕事をしている学生が、いつも3〜4人程度いる。修士論文を執筆中の学生らしい。仕組みが十分理解できていないところがあるのだが、こちらの修士は、9月にスタートして1年間のプログラムなので、修士論文を本格的にまとめるのは、6月に授業が終わった後のこの時期になるとのこと。

今日と明日は、南部を中心に全国的に記録的な熱波になるという警報が、先週から繰り返されていた。朝のBBCのニュースはこの件がトップニュースで、キャスターが中継で外から天気予報を伝えたり熱波に備える人びとの動きをリポートしたり、挙句の果てには気候変動の専門家まで登場して、冒頭20分間はこのニュースを伝えていた。宿舎のキッチンでいつも通りトーストやハム、野菜などの朝食をとるが、7時前でもすでにかなり蒸し暑く、暑さで食欲が出ない。

7月18日(月)朝の天気予報

イギリスでは一般的な家庭やオフィスにはエアコンがない。その中で今日明日は35℃とか40℃、という気温になるかもしれないということで、日本での同様の気温とはまた違った危うさがある。自分の場合、日本で鍛えられているとはいえ、エアコンが使えないという環境の中で果たして二日間乗り切れるのか、やや不安になる。間違っても熱中症などにならないように注意しなければ、と気を引き締める。

そのうちテレビからは、熱波の中での過ごし方の注意が流れてきた。水分補給をこまめにとか、不要不急の外での活動は避けましょうとか、日本でよく言われることとほとんど同じなのだが、一つだけ「おや?」と思う内容があった。

曰く「日中はカーテンや日除けを閉じて、窓も閉めなさい」。

窓を閉める?? 窓を開けて風通しを良くする、の間違いでは?

と思ったのだが、そうではなかった。話を聞いてみると、こういうことだ。

この記事にあるように、朝の気温が低いうちに窓やドアを開け、風通しをして冷たい空気を部屋の中に入れておく。そして気温が上がってくる前に、ドアや窓を閉じ、ブラインドやカーテンも閉じなさい、という話だった。部屋の中よりも外の方が蒸し暑いのに窓を開けておいたら、暑い空気が入ってくるだけで、室温は上がる一方である。考えてみれば当たり前のことだ。

日本の夏でも、朝の涼しいうちは窓を開けて風通しをし、冷たい空気を入れるというところまでは同じだ(とはいえ、とくに本州以南では「朝の涼しいうち」という時間帯が無い日も増えていて、そんなときは1日24時間エアコンをつけっぱなしにすることも少なくないと思う)。しかし、部屋の中よりも外の方が暑くなってきたら、あとは気温が上がる一方なので、さっさと窓を閉めてエアコンをかけてしまう。札幌でもここ10年ぐらい、真夏の少なくとも2〜3週間ぐらいはそんな日が多いと思う。だから、外が暑くなってきた後、エアコンがない場合、どうするかについてはよく知らなかった(または忘れていた?)のである。

熱波の二日間の初日の朝に、このことに気づいてよかった。もっとも最初は半信半疑のままだったのだが、とにかく朝8時からのオンライン打ち合わせの前に研究室に行き、すでに外はかなり暑かったので、BBCニュースのアドバイスを信じて、窓もブラインドも閉めて1日過ごした。私のいる研究棟は、10階建て*1の大きな建物なので、窓際の研究室はともかく、ロビーや階段をはじめとして、内側に冷たい空気をかなり溜め込んでいるようで、日中も適宜、ドアを開けておけば、快適とはいかないまでもどうにか過ごすことができた。

宿舎は出かける前に窓もカーテンとブラインドも閉めていったが、帰ってみるとかなり蒸し暑く、網戸もないので窓も開けづらく、夜はかなり寝苦しかった。

お隣のBさんがしばらく留守にしているらしいことに、先週末頃から気づき始めたのだが、夕方、帰ってきた。イギリス南部を車で8日間、旅してきたとのこと。すごく楽しかったみたい。

今日の気温はロンドンは37℃、ニューカッスルでも32℃まで上がったようだ。

7月19日(火)

熱波の二日目。昨日よりも気温が上がるとの予報。朝8:30(日本時間16:30)から大学院の科学技術社会論の授業。この授業は今学期はほとんどオンデマンドで進めてきたが、最終回の一つ前の今週と、最終回の来週は、期末レポートに向けたプレゼンをしてもらうためZoomを使って同時配信で行う。

終了後、今度は2時間、大学院のゼミがある予定だったのだが、都合により中止に。例の書類作成の作業が遅れているので、時間的には助かった。この暑さの中で書類作業の続きをするのが、なかなか精神的に堪えるが、窓もブラインドも締め切って、黙々と作業を続ける。

合間に、水をくみにロビーに出たら、並びの研究室で出勤しているジェームズさんに声をかけられ、ちょっと雑談。お話しするのは初めてだと思うが、「この夏の旅行の予定とかは?」という話になり、出身のスコットランドのオススメなどを聞く。2年間の延期の果てに、諸々やりくりしてどうにかイギリスへやって来て、とくに最初の1カ月は、抱えて来た仕事をこなすのに精一杯で、旅行のことなど全く考える余裕がなかった。そもそも、ニューカッスルに滞在していること自体が、自分にとっては立派な旅行なわけだし。だが、お隣のBさんも8日間も旅行して来たというし、可能な範囲で、こちらにいる間に色々と見て回らないともったいないという気がしてきた。

とはいえ、まずは目先の書類作成である。ゼミがなくなった時間を生かして作業を進め、夕方までに一通り埋めた。あとは明日、一からチェックと推敲をすればよいぐらいのところまで到達した。延ばしてもらった締め切りは木曜日の午後なのだが、今度こそは遅れるわけにいかないので、明日には終わらせたい。まだ完了していないが、何とか目処はついた。熱波の二日間をエアコンなしで乗り切ったということもあり(この種の言い訳が多いのが見苦しい(笑))、夕方、手前の方のパブでビールを飲んでから帰宅。

今日の気温は、ニューカッスルは昨日よりは低く29℃。しかしロンドンは40℃まで上がったようだ。猛暑の二日間が終わった。

7月20日(水)

昨日までの暑さがうそのように涼しくなる。朝、いつもの2つの定例ミーティングの後、書類作成の続き。淡々と作業を進める。午後4時すぎに完成して送り終えた。一度、期限を延ばしてもらったがどうにか終わった。爽快感はないが、ホッと一息。帰りにショッピングモールの中のいつものスーパーで買い物して帰る。ハム1パック£3.50、オレンジジュース1リットル£1、炭酸水500ml6本入り£1.60、レモンチョコレートクッキー£1.85、レンジでチンするだけのハムタリアテッレ£3.10(超手抜きの晩ご飯)。締めて£11.05(¥1,863)。

7月21日(木)

朝イチで、国会図書館のリスコミ調査について、分担執筆者の一人と国会図書館の担当者を交えてオンラインで打ち合わせ。

午後、先週から一度お茶に行こうと約束していたソラナさんと、大学正面のAnyoneカフェへ。アイスラテを注文して外の席に座ったのだが、だいぶ涼しくて温かい飲み物でもよかったなという感じ。猛暑はホントに2日間だけだった。

7月22日(金)

朝8時(日本時間午後4時)から、昨年度から続いているヒグマとの共生に関する市民参加についてのプロジェクトの打ち合わせを、遠藤さんと池田さんと3人で。遠藤さんが準備してくれている報告書のドラフトを一緒に検討する作業で、お昼近くまでかかってしまった。午後は週明けの気候市民会議に関するオンラインセミナーでの講演準備をしなければいけないのだが、午後は集中力が続かず。先週から続いてきた書類づくりと、今週前半の熱波とで、かなり消耗した感じ。早めに切り上げて休むことに。

7月23日(土)

今週はいくつかの刺激をきっかけに、できる時にはなるべくあちこち見て回らなければもったいないという思いが強まった。それで早速、週末は以前から一度行ってみると良いよと複数の人に勧められていたヨークへ。ニューカッスルから南へ鉄道で1時間ほど。ローマ時代からの古都で、中世に作られた城壁がよく保存されている。英国を代表する大聖堂の一つとも言われるヨーク・ミンスターも見どころ。朝早く出発して10時すぎには現地に着き、昼の間に市内をたっぷり歩いて堪能した。

城壁にはBarと呼ばれる門が6つあり、そこから旧市街に出入りする

城壁の上を歩くことができる

13世紀に城の見張り台として建てられたClifford's Tower

大聖堂 York Minster

大聖堂の内部

城壁から大聖堂を望む

7月24日(日)

ヨークには1泊した。夜はホテルで読書や勉強をできればと思って、本や勉強道具も持って来ていたのだが、先週の疲れが出たようで、ろくに勉強せずに眠ってしまった。朝早めに起き出して、翌日のセミナーの準備。駅の反対側にある国立鉄道博物館にも行きたかったのだが、昨日、城壁とタワー、大聖堂をゆっくりと観て回ったら行く時間がなかった。また時間を見つけて今度は日帰りで来よう。

朝10時の列車でニューカッスルに帰った。

宿舎に着いてすぐに、日本にいる兄とオンラインでつないで、おそらく出発前のゴールデンウィークに実家で会って以来、2カ月半ぶりに話す。午後はIHRPのメンターのボランティア。研究計画を作成中の高校生の相談に乗った後、運営スタッフの皆さんとの会議。高校生へのサポートの仕方についても助言する。

その後、明日のセミナーの準備の続き。午後11時前(日本時間の25日早朝)には資料が出来上がり、メールで提出。明日の朝は8時(日本時間では16時)スタートなのですぐに就寝した。

*1:地上12階・地下1階の間違いでした。何だ全然違うじゃないか、と思われるかもしれませんが、イギリス式で言うと11th Floorまであるということはぼんやりと記憶していて、日本式に言えばそこで1足さなければならないところを、間違えて1引いていたということでした。今、私がいる階は4th Floorで、日本で言う5階です。これまでも間違えて4階と言っていたことがあるかもしれませんが。(2022.08.02追記)

【NC日記】第7週:2022年7月11日〜17日

7月11日(月)

朝、国会図書館の調査の件で分担執筆者とオンラインで打ち合わせ。午後、スティーブンと研究についての打ち合わせ。共著論文の執筆について話を進める。16時からGPS学部(School of Geography, Politics, and Sociology)のSummer Party。1カ月前にも学会懇親会で行ったWylam Breweryで。今日締め切りの報告書の原稿がまだ出せていないが、ビールを3杯飲んだので、今日はもうダメ。

7月12日(火)

朝から、先週に続き脱炭素化技術ELSIプロジェクトのテクノロジーアセスメントに関する研究打ち合わせ。学食で朝食の後、大学院ゼミ。『現実の社会的構成』の第2部第2章。片岡さんが執筆中の論考のドラフトも検討。その後、13:00から徳田太郎さんらVOICE and VOTEの皆さんが主催する、『気候民主主義』の6回連続の読書会の最終回にゲストとして出席。

7月13日(水)

午後、東京都杉並区で気候市民会議の実現に向けて取り組んでいる住民グループの方々と、オンラインで情報交換。欧州気候市民会議研究会の原稿はあと一息。

7月14日(木)

10月に日本から来る同僚二人と予定しているスタディツアーの計画を立てるため、3人でオンラインでミーティング。思いのほか時間がかかったが、スケジュールの大枠は決まり、宿も全ておさえることができた。今、ホテルも飛行機もとるのが大変なので、早めに動いて吉。その後、欧州気候市民会議研究会の報告書原稿を完成させて、3日遅れで提出。原稿が一つ終わったので(というのは口実だが)、大学の前に二つあるパブのうち、まだ行ったことがなかった方に行き、一杯飲んで帰る。

7月15日(金)

締め切りが近づいている某書類の作成作業。

7月16日(土)

その続き。単純作業の部分も多い仕事なのだが、内容的なことも相まって、それはそれで結構こたえる。イギリス渡航の直前や、その後1カ月ぐらいの間、かなり忙しかった間もほとんど欠かさなかった日記を、まともにつける気が起こらない状態。

こういう時の気分転換は読書に限る。今月末の読書会で読む『ウクライナ日記』の著者であるアンドレイ・クルコフの代表作、『ペンギンの憂鬱』(沼野恭子訳)を前々から読んでみたいと思っていたので、電子書籍で入手して読む。

7月17日(日)

また前日の続き。当初想定していた内部的な締め切りに間に合わなさそうなので、相談をし数日延ばしてもらう。

気分転換の『ペンギンの憂鬱』は、読み終わってしまった。訳者も解説で書いていたけれど、村上春樹の小説を思い出す雰囲気の作品だった。2004年に書かれたその解説では『羊をめぐる冒険』の名前が挙がっていたけれど、読みながら自分が思い出していたのは『1Q84』。『ペンギンの憂鬱』は、新聞社の依頼で架空の追悼記事を書く仕事をしていたライターが、知らないうちに恐ろしい事態に巻き込まれていく物語。自明のものと思って疑わないこの現実は、全く不確かなもので、もしかしたら別の現実がパラレルワールドみたいに存在しているかもしれない、といった感覚を刺激される話だった。

東日本大震災の後しばらくの間、全く荒唐無稽な話なのだけれど、3月11日14時46分を境に、世界が二つに枝分かれしていたら、というようなことを空想することがあった。自分たちは地震津波原発事故の「起こった」方の世界にいるのだが、それと並行して地震津波も、原発事故も「起こらなかった」世界が別にあり、そちらではこれまで通りの生活が営まれている。津波原発事故の衝撃が大きすぎて、そこから逃避するような感覚でそんな空想にふけっていたわけだが、もしかしたら、パラレルワールドが重要なモチーフだった『1Q84』を、前年に読んでいた影響が大きかったかもしれない。『ペンギンの憂鬱』を読みながら、11年前のそんな経験を思い出したりしていた。

明日から2日間、イギリス全土でものすごい熱波が来るらしい。ロンドンなど南部の方では40度を超すかもしれないという予報になっていて、ニューカッスルでも30度台半ばまで気温が上がりそう。宿舎も研究室もエアコンがないので、熱中症に要注意。

【NC日記】第6週:2022年7月4日〜7月10日

7月4日(月)

8:30頃、研究室へ。朝、宿舎から外に出たら、風が秋みたいだった。ニューカッスルの夏はもう終わってしまったのか? 今日最初の予定は朝9:00から(日本時間17:00から)の日本とのオンラインミーティング。8:00からと比べて、1時間違うだけで格段に余裕がある。

今日はほんの少しゆとりがあったので、夕方早めに切り上げて2週間前と同じ床屋で散髪し、その後、少し離れた隣駅の前のスーパーで買い物。午後には気温も上がってきて、また夏らしい感じになってきた。しかし、少々気温が高くてもたかが知れているし湿度も低いので快適。

7月5日(火)

朝、オンラインミーティング。埼玉県所沢市で準備が進んでいる気候市民会議について関係者にお話を聞かせていただき、情報交換。学食で少し遅めの朝食の後、11:00から大学院ゼミ。午後は研究の時間に。昨年秋から参加している欧州気候市民会議の研究会の報告書原稿の締め切りが、来週に迫っていて本腰を入れないといけない。5月末の研究会に提出した執筆構想案をもとに、書くべきこと、書けることを考える。

当たり前のことなのだが、日本が夜に入るこちらの正午頃から深夜まで、日本からほとんどメールが来なくなる。5月下旬にイギリスに来てから、早朝に日本とのやりとりをしなければならず、そのリズムになじむのに苦労してきたわけだが、その反面、昼頃から夕方までの時間帯に集中することに、最近、身体と心が慣れてきた。今日の昼休み、外を歩いている時、そのことをふと自覚した。早朝に集中できる時間がとれないことに焦っていた先週までと比べると、大きな心境の変化。

7月6日(水)

朝8時から研究室のスタッフとの定例ミーティングを2つ済ませ、10時すぎに研究室を出て中央駅へ。今日から1泊でロンドンへ出張。ロンドンへはこれまでも4回行ったことがあり、1週間近く滞在したこともあるが、今度の在外研究期間中、ロンドンに行くのはこれが初めて。ロンドンは2010年夏に最初に訪れて、その魅力にとりつかれて以来、自分にとっては最も憧れる都市で、ロンドンに行く、というだけでテンションが上がる。

ラッセルスクエア近くのホテルに荷物を預け、ユーストン駅の裏手にある日本学術振興会のロンドン事務所まで歩いていく。16:00から同事務所と在英日本人研究者会が主催する「英国サバイバルセミナー」に参加。イギリスでのアカデミックポストへの就職を考えている、日本出身の在英の大学院生や博士研究員の人たちが主な対象の催しだったようだが、私のように、日本の大学に所属しつつ在外研究で一時的に滞在している参加者もいた。ざっと40人ほどの人が集まり、大盛況。

私とほぼ同時期に、同じ国際共同研究のプログラムで英国内の別の大学に滞在しているHさんも参加していた。Hさんとは、ともに前回の渡航を取りやめることになる直前の2020年3月以来、2年ぶりの再会となった。

Imperial College Londonの高田正雄教授(Molecular Physiology in Critical Care)の講演も、その後、UCLの大沼信一教授(Ophthalmology=眼科学)ら4人の先生方によるパネルディスカッションも、各先生の長年の経験に裏打ちされた深みのある内容でありながら、お話が非常に具体的で、自分のように短期間イギリスで研究する者にとっても参考になることばかりだった。先生方がとくに強調していたのは、日本の研究者は控えめで、自分の仕事や考えをきちんと表現しない傾向があるので、イギリスで仕事をしていく上では、しっかり自己表現、主張をしっかりしていくことを心がけるべき、ということだった。

終了後には懇親会があり、分野の近い研究者と知り合ったり、セミナーでのアドバイスを早速生かしてちゃっかり『気候民主主義』をPRしたり、今後開かれる予定の在英日本人研究者会の交流会にも誘っていただいたりと、貴重なネットワーキングの機会となった。私にとっては、イギリス滞在の序盤で、なおかつ生活がだいたい落ち着いてきた、ちょうど良いタイミングでこうしたイベントに参加できたのは幸運だった。

7月7日(木)

ロンドン2日目。午前中はホテルの前にある公園で研究関係の打ち合わせ。

その間にニュース速報が入ってきた。火曜日にスナク財務相とジャヴィド保健相が辞表を出し、その後も閣僚の辞任が相次いで、退陣秒読みのような状況になっていたジョンソン首相が、ついに党首辞任を表明したという。

打ち合わせの後、帰りの列車まで時間があるので、2019年9月の滞在中に「気候ストライキ」の若者・子どもたちが集う様子を見に行ったトラファルガー広場を再訪。この2019年の集会の様子を撮った写真が、後に『気候民主主義』のカバーを飾ったのだった。本を取り出して2年10カ月前と同じ場所で記念撮影。

本と一緒に帰ってきたロンドン・トラファルガー広場

7月8日(金)

昨夜はロンドンから帰り、シャワーを浴びて荷物を片付けたりしているうちに、寝るのが12時頃になった。ところが午前4:26(日本時間12:26)に、日本にいる娘から「安倍元首相銃で撃たれて意識不明」とのメッセージが入っていたことに朝5時頃、気がつき、すぐに完全に目が覚めた。

BBCラジオの6時のニュースでも、ジョンソン首相辞任の件に続いて、準トップの扱いで報じられていた。朝7時から脱炭素化技術ELSIプロジェクトのオンラインミーティングがあり、その後も報告書原稿を進めなければいけないなど、今日はしっかり仕事をしなければならない1日だったのだが、事件のショックで、どうにも落ち着かない感じになってしまった。

7月9日(土)

気を取り直し、週末は宿舎にこもって、溜まっている勉強をまとめてすることに。報告書原稿の執筆を進めつつ、遅れている翻訳の作業も並行して行う。

2020年に出たOECDの報告書、Innovative Citizen Participation and New Democratic Institutions: Catching the Deliberative Wave を日本語訳して出版すべく、日本ミニ・パブリックス研究フォーラムの仲間と分担して翻訳を進めている。各章の翻訳原稿は一通り揃い、現在、お互いの翻訳を手分けしてチェックしているところ。私も2章分、チェックを受け持っているのだが、想像以上に時間がかかり、先週金曜日だった締め切りを1週間も過ぎてしまっている。

原文を短く区切って読み、訳文の対応箇所をチェックして、訳の間違いや訳し漏れ、日本語として読みづらところなどがないかを、ほぼ一文一文、照らし合わせながら確認していく。時間がかかり、根気のいる作業である。

少なくとも2度は通読した報告書を、部分的にとはいえ精読することになり、理解を深める良い機会である。とくに自分が今、関心を持っているミニ・パブリックスの制度化(institutionalisation)について取り上げた章と、全体のまとめとなる最後の章を担当しているため、理解を再確認する意義はとくに大きい。この報告書は、ミニ・パブリックスや民主主義のイノベーションの分野では、最近最も影響力のある文献である。一刻も早く、読みやすくて信頼できる日本語訳を出し、日本でも広く活用してもらえるようにしたいという思いを新たにした。

7月10日(日)

前日に引き続き宿舎で勉強。翻訳チェックは1章分が済んで、朝のうちに共訳者に共有した。その後、報告書原稿作成の続きに戻る。

午後、1時間ほど、先日に引き続き、オンラインで IHRP 全国高校生 異分野融合型研究プログラム のメンターとしてのボランティア活動。今日は、研究を進めている参加者の高校生から、研究計画づくりの過程で生じている疑問や悩みを聞き、もう一人のメンターの方と一緒にアドバイス。今年度の全体テーマは水問題。自分の専門に近い研究テーマばかりではないのだが、研究計画を組み立てる上で考慮すべきことについて、俯瞰的な視点からコメントするよう心がけた。高校生の反応は上々で、数日前にクラウド上で先に書き込んでいた研究計画書へのコメントと合わせて、それなりに役に立つアドバイスができたみたい。研究者として身につけてきたスキルを、若い人たちにこういう形で伝えることで貢献できるのはうれしい。

その後、最近、宿舎にいる日曜日の定番となりつつある近所のGreggsへ。買ってきたソーセージロール(「Greggsといえばこれ」という鉄板メニューらしい)と弁当を食べながら、宿舎のキッチンにあるテレビをつける。参議院議員選挙の開票速報は映らないらしい。日本では開票速報の裏番組?としてEテレで中継中の、テニスの全英オープン男子決勝戦ジョコビッチ vs キリオスをみる。

ジョコビッチ vs キリオスの決勝戦を見ながら昼食

その後、スーパーが閉まる前に食材の買い出し。外は夏らしい天気。宿舎で机に向かって勉強している時間が長い週末だったが、今週は半ばに1泊でロンドン往復を強行して疲れてもいたので、これぐらいがちょうど良かったかもしれない。

【NC日記】第5週:2022年6月27日〜7月3日

6月27日(月)

朝5時(日本時間13時)から、環境政策対話研究所の社員総会と理事会。その後、8時から欧州気候市民会議の研究会。週初めの早朝から3時間以上のオンライン会議でやや消耗。休憩の後、大学へ。と書いてから思い出したが、自宅(宿舎)も大学の中にあるんだった(笑)。正しくは「(大学の中にある)宿舎から研究室へ」だ。

同室のソラナさんが学科長としばらく続けていた交渉が、先週ついに実り(祝!!)、ソラナさんは同じフロアの南側の並びに空いていたスタッフ用の個室の一つに引っ越していった。8月に重たい論文の締め切りが二つあると話していたから、このタイミングで集中できる環境に移れて、本当によかった。これに伴って、今週から二人部屋を一人で使う贅沢な状態になった。部屋には、新たに私の名前で表札が入った。

ソラナさんが個室に引っ越し、二人部屋を一人で使うことに。入口には私の名前で表札が

研究室に着いて、多少の雑用の後、昼ごろから、土曜日に予定されている『気候民主主義』の書評会での報告(本の紹介)の準備と、明日の輪読のテキスト(『現実の社会的構成』第2部1章「制度化」)の予習。報告担当ではないので、自分でレジュメを作る必要はないが、基本的なところから確認する必要を感じ、図書館で社会学の教科書や、A.シュッツの『生活世界の構造』などを借りて来て、参照しながら準備を進める。

20:30頃、宿舎に戻り夕食の後、『気候民主主義』にメールで感想を頂いていた方にお返事をお送りする続きを進める。まだ数十通は残っているが、毎日少しずつお返事したい。

6月28日(火)

昨日は22:30頃就寝して、5:30にアラームが鳴るまで、途中一度目が覚めただけで熟睡した。

8:30から、大学院の科学技術社会論の講義。この講義は今学期は、昨年度の授業録画を編集した動画を用いて基本的にオンデマンドで行っているが、今日はライブで質疑応答とディスカッションを行う。11:00から大学院ゼミ。バーガーとルックマンの『現実の社会的構成』の第2部1章「制度化」を読む。

午後は、今年から来年にかけて新泉社から順次刊行予定の環境社会学講座シリーズ(全6巻)で、宮内泰介さんとともに編者を務めている巻で、自分自身が執筆を分担する章の原稿のリライト。イギリスに来る前に、もう一人の編者の宮内さんからコメントを頂いていたのだが、手をつけられていなかった。午後いっぱい考えて、どこをどのように直すべきかの方針はほぼ立った。文章を仕上げるところまではいかなかったが。その後、連続性という意味では効率的かと考え、同じ企画の他の章の改訂原稿を検討する、編者としての仕事も合わせて行う。19:00頃宿舎に戻ってからは、ほとんど仕事はできなかった。毎日朝が早いので、どうしても夜も早くなる。

6月29日(水)

前日と同様によく眠れた。もともと朝型の人間なので、朝早く起きて仕事をするのはそこまで苦ではない。ただ、私にとって早朝は、世の中が動き出す前、しかも比較的頭がすっきりしている(あくまでも「当社比」)間に集中して進めたい原稿執筆や、研究や仕事の進め方など、ややこしい問題について考えることに充てる時間であった。その時間に打ち合わせをしなければならないのは、正直なところつらい。ただ、それでもこのリズムに少しは慣れてきた。そんな気がする。

午後はMedia is Hopeの支援者(クラウドファンディング参加者)向けの報告会。『気候民主主義』でも報告した「日本版気候若者会議」に関わる中で知り合った、名取由佳さん、西田吉蔵さんたちによる活動。メディアの作り手や伝え手と、視聴者・読者、スポンサーの3者をつなごうという新たなコンセプトの運動である。

15:00からFM TOKYOのインタビュー取材。来週月曜日のONE MORNINGという朝のワイド番組で、気候市民会議を取り上げてもらえるとのこと。40分間ほど、番組ディレクター渡邉勲さんの取材を受ける。取材の最後の雑談中に、Media is Hopeについても情報提供しておいた。

6月30日(木)

いつもは水曜日に行っている、研究室の事務補助員のSさんとKnさんとの定例ミーティングは、都合により今日に変更。8:00からそのミーティング。9月のドイツ出張の前に、Jensに会いに行く私用の部分の手続きについて、調整が続いていて、その打ち合わせが中心。

その後、脱炭素化技術ELSIプロジェクト(江守プロジェクト)の全体ミーティングをオンラインで。いよいよ今年度のテクノロジーアセスメントの活動をどのようなテーマで行うのかについて、本格的に議論した。他の案件もあって、今日だけでは話がまとまらなかったので、来週以降に改めて日程を設定し、TAを担当する八木絵香さん、松浦正浩さん、私と、江守さん、マヌエラさんといういつもの5人に加え、脱炭素化技術の評価枠組そのものの開発を担当しているグループのメンバーにも加わってもらい、集中的にディスカッションすることになった。

その後、昼前からは土曜日に予定されている研究会の準備に本腰を入れる。今週土曜日、田村哲樹さんの科研費の研究会で『気候民主主義』を取り上げて書評していただくことになっていて、冒頭、45〜50分程度時間を頂いて、私から本の内容を紹介することになっている。

自分で時間をかけて書いた本であり、内容は頭に入っているはずなのだが、その要点をある程度まとまった時間を頂いてお話しするというのは、結構周到な準備を必要とする作業である。

ということに気づいた(正確には思い出した)のが、今週月曜日に本格的にスライドを作ろうとし始めてからだった(いつも通り気づくのが遅い)。ああでもない、こうでもないと考え、どうにか夕方までには構成がまとまった。直前にこんな展開になるのは、いつもの経験から予想できていたので、明日は7:00-9:00の「プライムタイム」も含めて、何も予定を入れていない。スライドは明日、何とか仕上げよう。

7月1日(金)

ミルクティーとバナナの軽い食事をして、7:00に研究室へ。最低限の用事だけ済ませて、7:30すぎから、田村さんの研究会の準備にとりかかる。

何でこんなに時間がかかってるの?と、我ながらあきれる感じだが、こういうやり方しかできない人なのだから、せめて本人ぐらいはそろそろ覚悟を決めて、この人と仲良くしていきましょう(笑)……などと思いつつ、しかし時々やはりイライラもしながら、ああでもないこうでもないと、大まかには昨日決めた構成を、細かいところで練り直しつつ、スライドもつくる作業。この一進一退が、思い返せば一番幸せな時間なのだが、やってるときはもう勘弁してという感じ(振り返ってこれを書いている時点では、当然「幸せな時間」だったという認識になっている)。

もともと『気候民主主義』は、ページ数が多くなりすぎないようにすることが大切という編集部の猿山直美さんの方針で、執筆と推敲の段階で、盛り込む内容を厳選していた。今回は、それをさらに1時間弱の報告に圧縮するということで、この本が一体どういうストーリー構成になっているかということを、自分自身改めて認識する良い機会となった。

朝食だけはしっかり食べておこうということで、8:30頃、学食へ。戻ってから作業を続ける。13:30に昼休み。気づくと、今日はそこまでお腹が空いていない。学食でサンドイッチとヨーグルトを買い、それと、朝食の時飲まずに持って帰ってきたパック入りのオレンジジュース。ちょうどいい分量。原稿を書いたり、プレゼンを作ったりというときは、あまり満腹だと集中しづらい。

昼食後、1時間ほど集中し、冒頭の15分ぶんは台本も含めて完成した。たぶん結構いい感じの出だしになったと思う。

結局、夕方までには終わらなかったが、頭の疲れが限界なので一旦宿舎に戻る。

キッチンに行くと、隣人のBさんが、同じ中国からの客員で3階(2nd Floor)に住んでいる交通工学のXさんと、楽しそうにビールを飲んでいた。金曜日だものね。XさんのことはBさんから聞いていたが、直接話すのは今日が初めて。

Xさんは5年ほど前に日本に来たことがあるそうで、日本のどこに来たの?と聞いたら、"Dong Jing" とのこと。あぁTokyoね。「そうそうTokyoだったわ」

引っ越してきてすぐ、今は外のアパートに転居してしまった土木のHさん(この人はニューカッスルの専任教員)に、"I am from Hokkaido." って自己紹介した時も同じだった。「Hokkai...って日本のどこ? 聞いたことないわ〜」みたいな感じで、コロナ前まで中国からあれだけインバウンドの人が来てたのに、十何億人もいれば知らない人も意外と多いのかもね、とか納得しかけたのだけれど、念のためと思って "Bei hai dao(北海道)" と言ったら、「あぁBei hai daoは有名だよ」とのことだった。

夕食は食べずに、プレゼンの準備の続き。仮眠をとりつつ、朝までにどうにか仕上げた。

7月2日(土)

朝から大学へ行き、10時(日本時間18時)からオンラインで、田村哲樹さんが研究代表者の「「資本主義と民主主義の両立(不)可能性」の政治理論的研究」という、いかつい(失礼!)テーマの科研費の研究会にゲストとしてお邪魔して、『気候民主主義』を取り上げて書評していただいた。

上記のリンクにある研究会のメンバー表には、政治学の重鎮の方々のお名前も並んでいて、以前から今日は、未熟なこの本の内容について、厳しくご指摘いただく日だと考えてきた(ガクガク (;OдO) ブルブル)。それだけに、冒頭に時間を頂いて自分がする本の紹介だけは、なるべくわかりやすく、しかもごまかしなくやっておきたいと思い、今週は時間をかけて準備してきたのだった。

予定通り50分ほどの報告の後、質疑・討論の時間となったが、とても好意的なコメントが多く、ホッとした。色々と貴重な示唆も頂けた。とくにうれしかったのが、千葉眞先生から「これまでの熟議民主主義論の蓄積もきちんと踏まえて議論していて感心した」「環境社会学の強みがよく現れた実践性・実証性の高い内容だった」「札幌の気候市民会議は画期的だったし、イギリス・フランスの気候市民会議の実況中継的なレポートも良かった」といったお褒めのことばを頂いたことだった。

というのも、『気候民主主義』の原稿作成にまだ苦しんでいた今年1月、千葉先生の『資本主義・デモクラシー・エコロジー』(筑摩選書)が出版され、その深さや幅広さに圧倒されて、「気候変動と民主主義」はやはり自分などが軽々しく手を出すべきテーマではなかったのだと真剣に考えた時期もあったからである。

千葉先生から頂いたコメントや、研究会の他の先生方から投げかけていただいた質問やコメントを通じて、(本書の未熟さに何ら変わりはないが)執筆中から出版後にかけて抱えてきた胸のつかえが下りた気分だった。本の終章やあとがきにも書いたことではあるが、この本をたたき台に続きを深めていこうという、前向きな気持ちになることができた。

出版から間もないこの時期に(お声がけは出版前の5月初めに頂いていた)、こうした貴重な機会をつくってくださった田村さんに改めて感謝の気持ちでいっぱい。

7月3日(日)

こちらの時間で早朝に、北海道新聞編集委員の関口裕士さんからチャットでメッセージ。今朝の道新に『気候民主主義』の書評が出ていることを教えていただく。評者は吉田徹さん。早速電子版でチェック。

www.hokkaido-np.co.jp

「なぜそもそも気候変動対策という高度に複雑で専門的な問題に市民を巻き込むのか」という点を軸に、本質をつく書評を頂いた。環境社会学をベースとしつつ科学技術社会論をもう一つの軸足として、「科学技術への市民参加」*1をテーマとしてやってきた私にとっては、最もありがたい読み方をしていただいた。

朝食の後、列車で15分ほどの隣町、ダラムへおでかけ。11世紀の終わり近く(ということはノルマン征服の後)に建てられた立派な城と大聖堂がある。諸々の解説によると、城も大聖堂もノルマン様式の建築物を代表的するものだということで、両方合わせて世界遺産となっている。どちらもとにかくスケールが大きく、とくに大聖堂は内部も見学できたのだが、とても精巧に作られていて全く見飽きない感じだった。

ダラム大聖堂(以上2点とも)

お城の方は1837年以降、現在に至るまで、ダラム大学のカレッジ(学寮)の一つとして使われている。普段は見学もできるようなのだが、今の期間は行事の関係でできないとのことだった。門の前には、ケンブリッジで見たのと同じような「ここから先は学生の生活エリアなので部外者お断り」の札が掲げられていた。

ダラム城の入り口

ダラム城の方は、残念ながら今日は内部は見学できず

ウィア川の橋の上から城と大聖堂を望む

【NC日記】第4週:2022年6月20日〜26日

6月20日(月)

前週の日記の最後と重なるが、徹夜に近い状態で環境経済・政策学会の要旨を提出し終えたのが、締め切りの午前4時(日本時間正午)の直前。どうにか間に合った。間に合わせで構わないから、とにかく出し続けていくことが大事なのだ。

少し仮眠をとって、8時前に大学へ。23日(木)に担当することになっている北大の公開講座の質疑応答部分の進行に向けて、Zoomの接続テスト。5分ほどで何の問題もなく終わる。

その後、学食で朝食。日本とのオンラインミーティングで慌ただしい朝に、時間が取れる時には学食で朝食をとるのが、良い気分転換になっている。食堂のおばちゃんたちが明るく気さくなのがうれしい。

研究室に戻り、11時(日本時間19時)からのラジオ出演で話す内容を準備。

11時から札幌のFM局、RADIOワンダーストレージFMドラマシティの「ワークライフシナジー」にリモートで生出演。

この番組は、札幌での気候市民会議でアドバイザーを務めていただいた斉藤勉さん(当時は連合北海道副事務局長、現在は北海道勤労者安全衛生センター)がパーソナリティをしている関係で、2020年から21年にかけて2度出演したことがあった。

一度は有坂美紀さんと一緒に新札幌のスタジオで、もう一度は江守正多さん、札幌市役所の佐竹輝洋さんと一緒にリモートでだったが、今回は単独で約50分間の番組のゲストを務めるという大役。

リモートで日本のラジオ番組に生出演

斉藤さんからは、『気候民主主義』のことや、イギリスでの生活のことで話したいことを何でも自由に話してもらえばいいからと言われ、そのつもりで自由に話しているうちに、あっという間に時間が過ぎた。リスナーの反響とかはよくわからないのだけれど、楽しく話せたから、まぁいいでしょう。

先週末から今日にかけて、渡航前から遅れていた仕事、目先の対応すべき仕事が一度にクリアになり、だいぶ疲れもたままっているので、午後はお休みに。

カラッと晴れた最高の天気で、しかも自然が足りていない気がしたので、近所のJesmond Dene*1という自然公園まで歩いて行ってみた。南北に広がる公園を南から北へ通り抜ける形で、メトロで約3駅分に相当する距離を散策した。

Jesmond Deneを散策(以上4点とも)

この公園を開いたのは、ニューカッスル出身の発明家で実業家のウィリアム・アームストロング(1810-1900)だとのこと。あの「アームストロング砲」を開発し、ニューカッスル大学の前身である物理学校の設立にも尽力した人物である。キャンパスの中心部にあるArmstrong Buildingに今でもその名が残っており、大学博物館の前には三叉路を見下ろす立像もある。

2時間ほどゆっくり森の中を歩き、だいぶリフレッシュした。帰りはメトロの駅近くに感じの良いパブを見つけ、ビールを一杯頂いてからメトロで帰宅。

よく歩いて喉が渇いたので、やっぱりこれですね

6月21日(火)

朝7時から3件、立て続けに打ち合わせ。午後はデスクワーク。

昼食に出たついでに、学食のある旧図書館棟の中を探検して、1989年まで使われていたという旧閲覧室を発見した。天井の高い広い部屋に木製の本棚や机が並び、東大の総合図書館の閲覧室を思い出す重厚な雰囲気。

現在は言語関係の教材や資料、教育プログラムを提供するランゲージ・リソースセンターとして使われているとのこと。オンラインで利用登録してみた。

旧図書館棟(Old Library Building)の正面玄関。ここを入った左手に、現在はランゲージ・リソースセンターとして使われている旧閲覧室があった)

旧図書館棟。学食に入る時に使う北側からの外観

6月22日(水)

朝は研究室、プロジェクトのスタッフとの定例のオンラインミーティング。その後、ミーティングを受けて処理すべき用事を済ませてから、今年度の脱炭素化技術ELSIプロジェクトの進め方について、時間をとって検討する。

6月23日(木)

朝7時から、脱炭素化技術ELSIプロジェクトで、グループリーダーを務めているテクノロジーアセスメントの打ち合わせをオンラインで。今年度の活動の方針について、準備しておいたメモに沿って相談。ひとまず翌週のプロジェクト全体ミーティングに向けての備えはできた。

その後、10:30から北海道大学公開講座にオンラインで出席。高等教育研究部の教員が交代で受け持っている質疑応答の司会進行を担当。文学研究院の河原純一郎教授による「心理学から見たマスク生活でのコミュニケーション」の講義を1時間ほど聞いた後、受講者からZoomのQ&Aボックスに寄せられた質問を取り上げて、20分間ほど進行を担当。質問が途切れることなく活発に出され、無事に終わる。

マスクがいかに表情の読み取りや個人の識別、印象形成、対人関係などに影響を与えているかが理解でき、非常に興味深く役に立つ講義だった。

午後は、翌日のスティーブンとの打ち合わせの準備や、近づいている研究費の申請について考えるなど、前日に引き続いて研究の時間。

6月24日(金)

日本では一昨日、参院選が公示され新聞は選挙一色だが、イギリスでも今朝のニュースは、デヴォン州とウエスト・ヨークシャー州の二つの選挙区で行われた下院議員の補欠選挙(by-election)で、いずれも与党保守党が敗れたことを伝えていた。

www.bbc.co.uk

2週間ほど前には、与党内での党首信任投票でジョンソン首相が信任されたものの、不信任票も4割に上ったというニュースもあった。

このところのニュースでは、日本でも報じられている通り、コロナのロックダウン中にパーティーを開いていたというジョンソン氏自身の不祥事(Partygate)とか、インフレに伴う「生活費危機(cost of living crisis)」の話題が引き続き伝えられている。今週は鉄道職員約4万人による、30年ぶりという大規模ストライキもあり、これも大きく報じられていた。

www.bbc.co.uk

大学は今日、明日とオープンキャンパス(Open Day)。高校生が各学部や施設を見て回る様子は、日本の大学のオープンキャンパスと変わらない。

Open Dayの日のキャンパス

ティーブンが午後、政治学科のOpen Dayの催しに出番があるとのことで、14時から予定していた打ち合わせは16時半からに変更することにした。

打ち合わせでは、2週間前の最初の打ち合わせをベースに、これから一緒に書こうとしている論文のこと、新たな研究費申請のことについて相談し、気づいたら1時間半近く話し込んでいた。論文について一緒にアイデアを出し合いながらディスカッションしていく過程は、言葉の壁を感じることも全くなく、文字通り時間を忘れるひと時だった。今後、論文づくりは一筋縄ではいかない部分も出てくると思うが、このように過程を楽しむ気持ちを忘れずにやっていければと思う。

夜は、少し前からスティーブンが食事に誘ってくれていた。金曜日の夜は家族との大事な時間のはずだが、歓迎の気持ちをこのような形で表してくれるのがうれしい。

街中のパブで文字通り一杯やった後、イタリアンレストランへ。

ティーブンも日本には2度(一度は札幌、もう一度は東京)来たことがあり、食事をしながら日本のことなども話していたら、近くのテーブルで食事をしていた日本人の女性(がいたことには私は全く気づいていなかったのだが)の耳にとまったらしく、声をかけられた。詳しいことは聞きそびれたが、最近こちらに引っ越してきて住み始めたばかりだそうだ。聞けば何と北大出身(!)とのこと。在学中のゼミの先生は、私もお名前を存じ上げている方だった。世界は狭い。

6月25日(土)

イギリスに来て、丸1カ月。本当に多くの人の協力で、どうにか無事にイギリスでの仕事と生活が軌道に乗りつつある。

そして、日本であらかじめ購入し、5月25日にヒースロー空港に着陸した直後に使い始めたスマホのSIMが、今晩23:59で切れる。

切れたところでまた同じデータパックをオンラインで購入すればいいのだが、毎月それを繰り返すのも面倒なので、自動更新にしたい。ところが、そのためにはイギリスで銀行口座を開く必要があるという。この1カ月、その手続きのためのまとまった時間が取れなかった。

ネットですぐに口座を開けるデジタル銀行が便利だと、私とほぼ同時期にイギリスの別の大学で在外研究をしているHさんに、以前教えてもらっていた。意を決して、午前中に口座を開く作業をしてみた。

口座開設は、顔写真や在留カードなどをアプリからアップロードして、ものの10分ほどで簡単にできた。ところが、口座にお金を入れるためのカード(クレジットやデビットが使える)の登録に際して、認証のため日本の携帯電話の番号宛てに国際電話を受ける必要があったりして、ここに手間取った。

午前中いっぱいかかってしまったが、どうにか完了した。期限が切れるぎりぎりの日に、携帯を自動更新で使うことができるようになった。めでたしめでたし。

午後は、前々からのぞいてみようと思っていたキャンパス内の美術館(Hatton Gallary)へ。あいにく展覧会は何もやっていなかったのだが、ギャラリーと同じ棟にある芸術学部美術学科のOpen Dayが行われていて、プログラムの説明や、その後の校舎ツアーに紛れ込み、高校生の親子連れと一緒にスタジオや作業場などを見学させてもらった。

6月26日(日)

宿舎で比較的のんびり過ごす。午後、ボランティアでお手伝いしている全国高校生異分野融合型研究プログラムIHRPのメンター打ち合わせに参加。

*1:このdene(ディーン)という単語は私は初めて聞きました。辞書で調べると、valley(谷)という意味のイギリス英語らしく、deanと綴ることもあるそうです。ウィキペディアには「ノーサンブリア地方の方言」という記述もありました。

【NC日記】第3週:2022年6月13日-19日

6月13日(月)

先週末のケンブリッジ出張のお土産(アジア系スーパーでの衝動買い(笑)を含む)

7:30に研究室へ。国会図書館調査の16人いる分担執筆者に宛てた依頼状や執筆要領を先週から準備してきたが、今日はそれを発信する日。日本時間の夕方までには送りたいということで、早朝から順次、送信作業。10時(日本時間18時)前には何とか送り終えて、ほっと一息。これで、渡航時期に重なってしまい懸案となってきた三つの仕事のうち二つめが、どうにか峠を越した。

午後は、翌14日にオンラインで参加する学会のラウンドテーブルでの発言の準備。一通りドラフトを作成して、オーガナイザーを務めるスティーブンに送る。

6月14日(火)

明日から3日間、ニューカッスルでイギリスの国際関係論の学会(British International Studies Assosiation)の年次大会が開かれるのだが、今日はそのプレイベント的に、オンラインでのセッションが行われる。朝9時から、共同研究者のスティーブンがオーガナイザーを務める、"Climate Assemblies, Multi-Level Governance and the Global Climate Crisis" のラウンドテーブルに、例によって研究室の隣の部屋からZoomで参加する。現地に来ているのに、オンラインで学会参加というのも変な感じだけれど、もともとこのラウンドテーブルに参加を決めた今年初めには、実際にこのタイミングでイギリスに来られるかどうかは、そもそもまだまったく不透明であった。

イギリスや欧州の他の国などから総勢10人の登壇者が、ローカル/ナショナル/グローバルのさまざまなレベルで行われてきている気候市民会議の事例を短く紹介。私は "city level" での事例として「気候市民会議さっぽろ2020」について話した。

その後、一息入れて11:00から大学院ゼミ。そうこうしている間に、渡航前後のドタバタで遅れていた3つの仕事のうちの最後の一つについて、催促のメールを頂いてしまう(ご迷惑をおかけして本当に申し訳ありません m(_ _ )m)。これまでも、空き時間はこの原稿を最優先に進めてきたが、国会図書館の件もひと段落した今、少々無理矢理にでも他の全てを後回しにし、仕上げるときだと覚悟を決める。午後、4時間ほど集中して、分量的には8割ぐらいのところまで進めた。

帰宅して夕食を作って食べてから、20時頃からさらに頑張るぞと思ったが、完全にエネルギー切れ。朝9時からフル回転しているので、無理もない。

6月15日(水)

結局、20:30頃から5:30まで眠った。0時頃に目が覚めてからは熟睡というわけにはいかなかったが、睡眠時間はとれた。

時間を節約するため宿舎では朝食をとらず、6:30頃に研究室へ。毎週水曜日は朝(日本時間では夕方)、研究室のスタッフとの定例連絡、打ち合わせをする。それに備えて、届いているメールの処理などを8:00までに済ませる。

10:00すぎに打ち合わせが終わり、諸々の用事を済ませた後、11:00すぎに原稿に戻る。2時間半ほど書き続ける。今日から学会が始まっていて、せっかくの機会なので聴きに行こうと考えていたが、原稿に目処がつくまでは行かないことに決めた。ただ、今日夕方にある懇親会だけには顔を出しておきたい。こういう場合、経験上、名札だけは手に入れておかないとややこしいことになる可能性がある(=懇親会場に総合受付が移動してくるかどうかは五分五分)と考え、学食での昼食のついでに大学の隣にあるメイン会場(Civic Centre)で受付だけは済ませてくる。

40分で戻ってきて、原稿の続きを3時間ほど。夕方、キャンパスの隣の公園にあるWylam Breweryで開かれた懇親会に参加した。知っている人は、最近知り合ったばかりの政治学科のスタッフ以外にはいないわけだが、国内学会ながら数千人規模の会員がいる学会で、常連ではない参加者もそこそこの数いるらしく、そんな人たちを見つけて、1時間ほどおしゃべりを楽しむ。

www.wylambrewery.co.uk

学会の懇親会。かなり密だがみんなノーマスク

6月16日(木)

朝7時から大学の業務関係でオンラインでのミーティングを宿舎から。その後、研究室へ。急ぎで対応する必要があるものに二つだけ返事をし、9時すぎから原稿を再開。『気候民主主義』で書いたテーマに近接する話を日本語で書いているのだが、書くべきこと、書けることはあらかた本で書いてしまったばかりの今、いかにそこから少しでも発展させるかを悩みつつ書くので、どうしても時間がかかってしまう。これは研究を次のステップに進めるのに必要な産みの苦しみと考え、辛抱しつつ、とにかく書ける文章を重ねていく。

14時頃、一旦、通して読めるものがまとまり、編集部と編者の先生に報告を兼ねて一旦送る。目の前で開かれている学会に全く行かないのはもったいないと考え、一度気持ちをリセットして夕方までの残り2コマに行ってみることに。一つめの時間帯は "Energy Colonialism" をテーマとしたセッションで、脱炭素化に向けたトランジションコロニアリズムをめぐる理論や現地調査に基づく数本の報告、もう一つも気候変動をテーマとしたセッションだった。どちらも意外と自分のテーマに近く、色々とヒントを得ることができた。

学会でいろいろな刺激を受け、目下、終わらせなければならない原稿の他にも、考えるべきことが色々と未整理になっていることに改めて気がつき、晩ご飯の後、頭の中を整理しようとノートにメモを書き出し始めるが、考えはあまりまとまらず。頭が疲れすぎていて睡眠が必要。

6月17日(金)

5:30頃起床し、今朝も宿舎では朝食は食べず体操だけはして、6:20に研究室へ。途中、学食での朝食を挟んで、正味3時間半ほど原稿に集中。ほぼ完成に近づいてくるが、力尽きた感じになったので、一旦原稿を離れて、昨夜やろうとした頭の中の整理の続きを、具体的な作業に落とし込んで、少しだけやる。

ある日の学食でのFull English Breakfast(4.95ポンド=約800円)

11:30(日本時間は19:30)から、環境政策対話研究所の理事懇談会にオンラインで参加。判断の難しい重たい案件についての意見交換。案件自体は難しいが、これを何とか好機としようとする代表理事の柳下さんの執念や、他の役員からもさまざまな角度から意見が出されての活発な議論に、刺激を受ける。難渋している原稿のテーマとも深い関わりがある話でもあり、今後1年間のイギリスでの活動も含め、この先自分がどんなふうに研究を進めるべきなのかについても考えさせられる貴重な時間であった。

その後もまた原稿。学会は今日で終わりなので、16:45からの最終セッションにもう一つだけ参加しておくことにする。"Emerging technology" がテーマのセッションが、Civic Centreの本会議場(Council Chamber)といういかにもメインっぽい会場で開かれるということで、最後にこれだけはのぞいておくべきと思ったのだった。報告のテーマは、自律型致死兵器の開発利用とか、安全保障とAIなど。

会場に行ってみると、報告者と座長のほか参加者は3人。しかも3人いる予定の報告者は一人がドタキャンらしく、2人。広い本会議場にたった6人の出席者というセッションで、黙って聞いているだけというわけにもいかず、質疑応答、ディスカッションにも加わる。

18:00すぎにセッションが終わり、研究室に戻って原稿の続き。その後の展開はFacebookに書いた文章を引用。

出発前に済ませなければならないのに遅れに遅れ引きずっていた仕事が三つあり、この1か月ほど、イギリスへの移動と並行して対応に追われていました。その最後の一つを先ほどついに提出し終えました。ご迷惑をおかけしている関係者の皆様には心からお詫び申し上げます m(_ _)m

当地で先ほどまで開かれていた国際関係論の学会のため、この3日間、留守にしていた国際政治学のソラナさんが帰りがけに部屋に寄って「まだやってるの〜?! 早く帰らなきゃだめでしょ〜。私はもうヘトヘト(笑)」と声をかけけくれたおかげで、いい意味で見切りがつけられました。こういうときのラボ仲間の存在はありがたいものですね。

今晩は研究室で徹夜かと覚悟していましたが、すでに夜8時とはいえ明るいうちに帰れました。

時差の関係で日曜深夜までに日本に提出しなければならないものが二つあるのですが、それは日曜日にやることにして、明日は完全オフにします!

拙著への丁寧なご感想を早々に頂きながらお返事できていない方がいらっしゃり、大変心苦しく思っております。少しずつお返事を差し上げております。どうかご寛恕のほどお願いいたします。

懸案の原稿をどうにか脱稿し、明るいうちに宿舎に帰れた

6月18日(土)

朝、近所で床屋を見つけて散髪。ごく普通の街の床屋、という感じの所。バリカンで15分ほどの簡単なものだったけれど、担当してくれたおじさんの感じがよく、値段も11ポンド(1870円)とリーズナブル。顔剃りも洗髪もなしで、日本の一般の床屋よりかなり安い。日本で言うと、短時間で仕上がるQBハウスのようなところに近いかもしれない。チップも含めて13ポンドをカードで支払い。

昼前から路線バスでタイン川の対岸のIKEAに行き、部屋で使うものを買い出しに。夜は夕食を兼ねて宿舎のすぐそばにあるパブに。完全オフの一日になった。

路線バスでIKEA

6月19日(日)

10月にオンラインで開かれる環境経済・政策学会(私自身は非会員)の大会に向けて、企画セッションの応募に登壇者として加わることになっていたのだが、つい数日前、提案のためにはこの段階で報告要旨を各自2ページずつ提出する必要があることが判明。締め切りは日本時間の20日(月)正午(イギリス時間では午前4時)。だが、例の原稿を提出するのに精一杯で、これに対応する余裕がないまま、週末を迎えてしまった。

日曜日の昼ごろから作業を始めたのだが、現時点で研究成果として出せるものは何かを考えるのに手間どる結果に。仮眠を挟んで完成したのは期限ギリギリの午前3時すぎ。締め切り直前に、無事にウェブサイトから要旨を登録し終えた。今週も最後まで綱渡りだったが、これで渡航後かなりバタバタしてきた状態は通り抜けて、少し新しい局面に入れそう。