mikami lab.@名古屋大学 大学院環境学研究科 環境政策論講座

名古屋大学大学院環境学研究科 環境政策論講座の三上直之のサイトです。2023年10月に北海道大学から現所属に異動しました。

【NC日記】第1週:2022年5月30日-6月5日

5月30日(月)

イギリスと日本との間には9時間の時差がある。現在は夏時間のためそれが1時間縮まって、8時間の時差。つまり日本の午前9時がこちらの午前1時であり、日本で人々が活発に動いている昼間の時間帯は、ちょうどこちらが眠っている時間ということになる。

日本とイギリスとでZoomなどで打ち合わせをしようと考えると、日本の午後4時-6時頃が、こちらの朝8時-10時にあたり、ちょうどいい(それでもこちらはちょっと早起きしないといけないのだけれど)。が、この「ちょうどいい」時間(私は「プライムタイム」と呼んでいる)が1日のうちに2時間程度しかないので、日本とのやりとりはなかなかしんどいことになる。

今日はそのプライムタイムの2時間は、欧州気候市民会議に関する毎月1回のチーム会合だった。この会合は、普段からリーダーの森秀行さんがいる地球環境戦略機関(IGES)の東京オフィスとオンラインでつないで参加しているもので、イギリスにいるからといって参加の仕方が変わるわけではない。時間帯は午後4時から6時に固定されていて、たまたまプライムタイムに当たっていた。今日は宿舎から参加した。

ミーティングの後、大中小と3つ持ってきたスーツケースのうち、約35Lの小さいものに本やパソコンのディスプレイなど、研究室で使うものを詰めて研究室へ。

午後、出発前から持ち越してきたいくつかの仕事をこなす。先週の日記に書いた環境社会学のものとは別に編者を務めている新しい企画があり、その依頼など、やや神経を使う仕事が続く。出発前後、そのような集中をできる時間を確保することが難しく、後回しになっていた。およそ1週間ぶりに、イギリスに場所を移して仕事場のデスクに落ち着くことができたので、午後の3時間ほど集中して進めた。

研究室は、ルーマニア出身のポスドク、ソラナさん(国際政治)との相部屋である。オンライン会議などの時はこの部屋ではできないので、同じフロアの会議室に移動することになる。これまでこの部屋を一人で使っていた彼女にも負担をかけることになり、やや心苦しい感じ。

部屋の予約は、学科のフロアにあるゼミ室的な部屋に至るまで、すべて全学的な予約システムを使ってオンラインで行うしくみになっている。このあたりもデジタル化が徹底している。ソラナさんが、予約システムの使い方を教えてくれた。

街中のショッピングモールの中のスーパーが午後6時に閉まるので、当座の食料を調達するため5時半頃に研究室を出た。大急ぎで買い物を済ませて部屋に帰ったら、時差の影響がまだ強く、夕食を食べる元気もなく19:30頃眠ってしまった。

5月31日(火)

早く寝たので当然のように夜中に目覚めたのだが、このまま起き出して仕事をしては、時差の影響を引きずったままになると思い、5時頃まで布団の中に。日付が変わってからは熟睡はできなかったが、睡眠時間はそれなりにとれたと思う。

5時過ぎに起きてメールを開くと、日本で続いている仕事でリモートでの対応が必要なものの一つに関して、いくつか急いで対応すべき事態が発生しているとのメールが同時に複数入っていた。それぞれそれなりに神経を使う話で、急を要する案件でもあり、朝6時前からメールで対応を始めた。

8時間の時差があるので、こちらが朝起きると、その日1日の日本から届いたメールが返事を待っている、という状態になる。それに対応してから、こちらでの仕事を始めるということになるので、これはペースがつかめるまではなかなか大変そうだ。この程度は甘いものだと思うが、思わず駐在員や特派員の人たちの仕事の大変さを想像した。

昨晩は夕食を食べずに寝たので、宿舎のキッチンで朝ご飯を作って、しっかり食べてから出かける。

共用のキッチンで朝食

じつは昨日、先週のうちに発行してもらった職員証(兼カードキー)に研究棟への時間外アクセスの権限が付与されていなかったり、私のIDで予約システムにログインして部屋を予約しようとしても、政治学科のフロアの部屋が候補として表示されなかったりと、ITシステム上の権限のセットアップが不十分なことが判明していた。

メールなどでやりとりするだけではらちが開かないので、この日出勤してすぐの仕事として、ITデスクに電話して事情を説明して対応をお願いした。ネイティブスピーカーに早口でまくしたてられるという、なかなか厳しい状況になったが、ともあれ必死で対応する。並行して、この日すぐに必要な部屋は、同室のソラナさんに頼んで予約してもらった。

その部屋を使って、11:00(日本時間19:00)から大学院のゼミをオンラインで。博士の二人の研究報告。少し延長して、13:20頃終わった。昨日に引き続き、隣の建物のカフェテリアで昼食。ワンプレートだが、ボリュームのある温かい食事が5ポンドで食べられるというのはありがたいが、5ポンド=800円強なので、学食での1食分としては結構いい値段という気がする。

ある日の学食でのランチ

午後、〆切を大幅に過ぎてしまっている雑誌原稿に、ようやくとりかかる。間が空いてしまったので、サクサクというわけにはいかなかったが、夕方まで集中して色々と考え、ひとまずこの原稿に頭を戻すことはできた。

時間外の研究棟への入館や、部屋の予約の権限など、IT関係の問題は、この日のうちにすべて解消した。このあたりの対応は、非常に迅速で助かった。

6月1日(水)

昨日、時間外アクセスが可能になったカードキーを使い、7:30に出勤。毎週水曜日、日本時間の16:00-18:00の間に、日本の研究室のスタッフとZoomで連絡を取ることに決めていて、今日はその初回である。8:00(日本時間16:00)から一つ、9:00(同17:00)からもう一つ。

その後、編者を務めている新しい企画の依頼の続きなど。出発前の予定をぬって、ここ1か月以上、苦しい状態が続いてきたが、あと一息、気の抜けない調整が続く。

午後、3日連続のカフェテリアでの昼食の後、同室のソラナさんとお茶に出かける。これから一緒に仕事をすることになるので、早いうちに話しておければと思い、誘ったのだった。1時間ほど、お互いの経歴などについて雑談。とても良い時間だった。研究室に戻って、雑誌原稿の続き。

6月2日(木)

今日も朝5時頃に起床し、6時から日本と打ち合わせ。編者を務めている新しい企画の著者(候補)の研究者と、Zoomで原稿依頼のお話。ありがたいことに快諾いただく。

その後、朝食と出発の準備を済ませて、9:00前に研究室へ。エリザベス女王の即位70年(プラチナジュビリー)を記念した祝賀行事があるということで、今日から日曜日までイギリスは4連休。快晴で気持ちがいい。大学は閑散としている。

9:00(日本時間17:00)から上述の新しい企画の件で、原稿整理のサポートをお願いするYさんと、スタッフのKrさんの3人で打ち合わせ。Krさんの的確な準備で話がスムーズに進む。Yさんも自身の研究が山場を迎え忙しい中、力を貸してくれることになった。分担執筆者への原稿依頼はまだ不透明な部分が残るが、一歩ずつ前進しつつある。

一息入れてから、原稿に戻る。

午後遅めの時間(日本では深夜)に、家族と久しぶりに時間が合い、電話で話す。こちらの夜は向こうの早朝で、向こうの夜はこちらの午後〜夕方の忙しい時間だったりということで、家族と電話するのも、平日はなかなか時間を見つけるのが難しそう。

6月3日(金)

今日は久しぶりに朝予定が入っていない日で、だいぶ余裕があった。日本時間の16:00-18:00にあたる「プライムタイム」に予定が入っていると、朝かなり慌ただしくなる。この時間帯の使い方がポイントだということが、1週間過ごしてわかってきた。

プラチナジュビリーの連休2日目ということで、大学はいよいよのんびりした雰囲気。昨日まで1週間、毎朝、宿舎を出て24時間営業の図書館の前を通り、「ハドリアヌス帝の」という名前のついた陸橋(Hadrian Bridge)を渡って、研究棟まで5分ほどで着く最短ルートを使ってきた。が、今日は余裕があるので、ハドリアヌスの陸橋を渡ってから右にそれ、少し寄り道をして研究棟へ。

Hadrian Bridge

別のルートを通ることで、研究室から見える建物の位置関係なども体感できた。朝の「プライムタイム」をはじめとして、時間の使い方はしばらく試行錯誤が続きそうだが、徐々に環境になじめてきた気がする。今日もとても天気が良く気持ちが良い。

夜は、札幌の自宅を出る時、荷物に突っ込んできた残り物のカレールーを使って、カレーライスを作ってみた。じゃがいも、にんじん、玉ねぎ、鳥のむね肉は、スーパーで比較的安価で手に入った。米はまだ手に入っていなかったのだが、街中のスーパーにインディカ米のレトルトご飯が1袋50ペンス(約85円)で売っているのを見つけ、この値段ならば、ということで失敗覚悟で買ってみた。これがカレーに良く合って、とてもおいしい(お土産に買って帰りたいぐらい)。いずれは米を買ってきて鍋で炊こうとは考えていたのだが、ご飯はこれでもいいのかもしれないと思うおいしさだった。

6月4日(土)

今日は研究室には行かず、宿舎で肝心の原稿の続きや、読書など。

7月の読書会の課題図書であるアンドレイ・クルコフウクライナ日記 – 国民的作家が綴った祖国激動の155日』を読んでいる。最初、2014年に出版されて翌15年には邦訳が出ていて、このたびのことで今年4月に増刷された本。まだ電子書籍になっていないようで、出発直前にイギリスに持って行く本のリストに加えた。手元にある限られた日本語の本のうちの1冊という意味でも貴重な本なので、7月まで繰り返し、じっくりと読みたい。

原稿が煮詰まってきて、午後少し図書館へ。連休中のためか、大賑わいという感じではないが、勉強している学生はそれなりにいる。図書館にはこれまでにも来たことはあったが、これから1年間お世話になるということで、3階の社会学政治学の開架の棚を初めて一通り眺めてみた。書庫が別にあるのかなど、まだよくわかっていないのだが、開架の棚には教科書や基本書のような本が多く、複本が多数(ものによっては10冊以上も)あるものが目立つ。

晩ご飯は、昨日カレーを作った残りのむね肉と、これも札幌の自宅から持ってきた残り物のキューブ状の鍋スープを使っての鶏鍋。ブロッコリーやにんじん、マッシュルーム、ネギなど、スーパーで手に入る野菜をたっぷり。そして、例のレトルトご飯で、〆の雑炊も作ってみた。インディカ米の雑炊って初めて食べたけれど、なかなかいける!

インディカ米で〆の雑炊を

6月5日(日)

今日も宿舎で過ごす。宿舎が入っているのは、英語で「テラス」と呼ばれる長屋形式の建物で、地上3階・地下1階建て。私が住んでいる区画には、自分の部屋も含めて計13室があり、すべてがニューカッスル大学のビジター用の宿舎として使われている。同じテラスの他の区画は、民間のオフィスや、ロースクールの校舎として使われているところもある。少し調べてみたところ、このテラスは1870年代に建ったものらしい。キャンパスのこのあたりには、19世紀に建ったテラスが軒を連ねている。古い建物は日本にもたくさんあるけれど、100年以上も前に建った建物で暮らすというのは初めてで、これも何とも貴重な体験だと思う。

同じフロアには居室が4室。他の3室は、工学部の中国人の男性が二人(一人は土木、もう一人は流体力学が専門)と、ここの医学部にインターンシップに来ているというオーストリア出身(大学はドイツ)の医学生の女性。

ウクライナ日記』は読了した。雑誌原稿も引き続き頑張るが、やや壁にぶつかりつつある。

遅い昼食の後、気分転換も兼ねて外出。最寄りのメトロの駅から、市街地とは反対方向、すなわち空港の方へ向かって数駅の所にある安売りスーパーへ。土木の中国人が教えてくれた、いくつかのスーパーチェーンの一つである。ネットで様子を調べてから行ったのだが、食料品だけでなく日用品や家電関係も扱っていて、宿舎の部屋にあると便利な細々としたもの(例えばこちらの電圧に合うテーブルタップなど)が見つかって助かった。

便利そうなものが色々とあるなぁと店内を物色していると、突然、照明が暗めに。「4時で閉まるよ」(たぶんそう言っていたはず(笑))と、店員さんに声をかけられ、あわててお会計。日曜日はスーパーはかなり早く閉まるのですね。

もう少し宿舎に近いところに、平日は夜10時まで空いていて、今週2度ほどお世話になったスーパーがあるのだが、帰りに前を通ってみると、ここも5時で閉まっていた。