mikami lab.@北海道大学 科学技術コミュニケーション研究室

北海道大学で科学技術コミュニケーション・科学技術社会論を担当している三上直之のサイトです

杉山滋郎先生のご退職によせて


当研究室の杉山滋郎(すぎやま・しげお)特任教授は、本日をもって北海道大学を退職されます。

杉山先生のご専門は近代日本を中心とする科学史や、科学技術コミュニケーション。1950年、富山県高岡市生まれ。東京工業大学理学部を卒業後、東京大学大学院で科学史を専攻。筑波大学専任講師などを経て、1991年、北大理学部に助教授として着任されました。95年に大学院理学研究科(当時)教授、2014年に理学研究院特任教授。これまで25年間にわたり、本学の理学部や大学院理学研究科・理学院などで、科学史を中心とする科目を担当され、また数多くの大学院生を指導されました。代表的な著作に『中谷宇吉郎〜人の役に立つ研究をせよ〜』(ミネルヴァ書房)や『北の科学者群像 〈理学モノグラフ〉1947-1950』(北海道大学図書刊行会)、『日本の近代科学史』(朝倉書店)などがあります。

2005年にはCoSTEP(現・科学技術コミュニケーション教育研究部門)を立ち上げ、約9年間、その初代代表を務められました*1。その間に輩出された600人近い修了生*2は、大学や研究機関、学校・教育関係、マスメディアをはじめ、官公庁、民間企業、NPOなどの幅広い領域で、科学技術と社会の橋渡し役として活躍しています。

CoSTEPは当初、杉山先生らが科学技術振興調整費の支援を獲得して、発足しました*3。振興調整費による支援が2010年春に終了した後も、CoSTEPはそのままの規模で、北大の教育組織として活動が継続され、現在の科学技術コミュニケーション教育研究部門へと発展します。先生は、外部の競争的資金を獲得して科学技術コミュニケーションの教育プログラムを一から立ち上げ、それを大学の正規の教育組織として定着・発展させるため、10年以上にわたり先頭に立って尽力されました。

北大における科学史、科学概論や関連分野の教育は、戦前の北海道帝国大学時代にまでさかのぼるそうです。こんにちにまで至るその系譜を、杉山先生がこのたび、「北大における科学史の教育・研究の歴史」と題する文章にまとめてくださいました。私はこの作品を通じて初めて、当研究室やCoSTEPの源流についてまとまった形で知ることができました。北大の機関リポジトリにおいて無料で公開されています。

杉山滋郎「北大における科学史の教育・研究の歴史」、2016年3月
http://hdl.handle.net/2115/60889

個人的な話になりますが、私にとって大学教員としてのふりだしは設立当初のCoSTEPの特任教員を務めた3年1カ月間です。当時私は、博士課程を単位取得退学した直後にCoSTEPに採用され、学位論文の作成を抱えたまま東京から北海道に赴任しました。新しい教育ユニットの立ち上げ業務のかたわら、夜なべして論文作成に取り組む毎日でしたが、先生はいつもおおらかに見守り、励ましてくださいました。論文審査のゆくえを心配して、東京の大学院で行われる論文審査会にまで駆けつけてくださったこともありました。

この時期に先生から、CoSTEPでの教育研究活動の一環として「遺伝子組換え作物に関するコンセンサス会議の企画運営」や「サイエンス・カフェを用いた科学技術コミュニケーターの実践教育」といったテーマを与えていただき、科学技術コミュニケーションの活動を通じて研究を進めるスタイルを学びました。

その後、学内で高等教育機能開発総合センター(現・高等教育推進機構)に異動してからも、大学院教育では理学院担当となり、杉山先生とともに当研究室(科学技術コミュニケーション研究室)に所属しました。先生のもとで、受け持ちの大学院生らの指導にあたりつつ、BSE問題に関する討論型世論調査などの大型プロジェクトに共同研究者として参加させていただきました。

今月は先生のご退職を祝う行事がつづき、そうした席で私も、4月からの生活について先生が話されるのをうかがう機会がありました。ご退職後もさらに研究に没頭される日々となりそうだとお見受けしました。これまでの先生のご指導に心からお礼を申し上げますとともに、引き続きよろしくお願いいたします。いつも飄々としていながら、人並みはずれたバイタリティで私たちを驚かせ、勇気づけてくださった先生の、ますますのご健勝を祈念しております。*4

*1:正確には8年9カ月間で、その内訳は次のようになります。2005年7月〜2010年3月は科学技術コミュニケーター養成ユニット代表、2010年4月〜9月は高等教育機能開発総合センター科学技術コミュニケーション教育研究部長、2010年10月〜2014年3月は高等教育推進機構高等教育研究部科学技術コミュニケーション教育研究部門長。

*2:杉山先生が代表を務めた2013年度までの修了者数。その後、2014・2015年度の修了生を合わせると約700人にのぼります。

*3:大学院理学院で同分野の修士・博士課程の教育を行う科学コミュニケーション講座も、このときに設立されました。

*4:写真は3月12日、フロンティア応用科学研究棟で開かれたシンポジウム「「デュアルユース」と名のつくもの 〜科学技術の進展が抱える両義性を再考する〜」(CoSTEPほか主催)で。CoSTEP撮影。